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豚がつづる読書ブログ
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★★★

少年イヒカは禁じられた深山へと入り、霧に迷ったところを深山に住む女に助けられる。

その女によって閉じ込められている少年のおかげで、女の元を逃れたイヒカは少年を助けることを約束する。
しかし、その「約束」によって、二人は数奇な運命に呑みこまれてゆく…。

五篇の連作短編集。

第一話は少年イヒカの話、第二話は深山に逃げ込んだフツとイオエの話、第三話はイヒカと同じ村に住むオシヲの少年時代の話…という風に、章ごとに時系列も主人公もバラバラです。
そのため、どのお話も「深山」と呼ばれる架空の山が舞台のお話となっているのですが、最後の短編までお話の着地点が全く見えず、読むのに時間がかかりました。

お話が進むにつれ登場人物の人間関係や経緯が何となく理解できるようになり、物語のピースを埋めていきながら読み進んでくわけですが、最後までよくわからない部分もあり、構成が凝りすぎのような気がしました。

ある章では真実として語られていく物語も次の章では昔話や伝承として語られ、真実がぼんやりとした輪郭に変化していくので読み手の頭は混乱してしまいます。

読後に「結局、何が言いたかったんだろう?」と思わせるほどの不可思議なストーリーでしたが、多分、著者は、伝承の成り立ちと伝播についてミステリ仕立てにして描きたかったのかなーと思いました。
昔話の裏に隠された真実や、その昔話が広まる経緯が語られ、いかに昔話というものが作為的・政治的にゆがめられ、また新たな物語となって広められていくのか・・・昔話の成り立ちというものに瞠目させられました。

(2019年12月読了)
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★★★★

13話の怪談・不思議な話を集めたホラー短編集。


作者の辻村さんを思わせるような、小さな子供のいる作家が主人公の話が多く、まるでエッセイのように感じられます。

既視感のあるありがちな短編も多いのですが、辻村さんの手にかかると途端に怖くなります。
リアルとフィクションの微妙なさじ加減がうまく、話が現実味を帯びていて…とにかく怖いのです!
細部まで目配せされたテクニックと構成が素晴らしく、ゾクゾクしながらも舌を巻きました。

ホラーって、登場人物が理由も理屈もなく、理不尽な目に遭うのが一番怖いと思うのですが、どの短編でもそのあたりがうまく処理されていて、感心させられました。

最終話の「七つのカップ」だけ、亡くなった子どもとその親を描いたあたたかいお話となっており、豊かな気持ちで本を閉じることができました。

(2019年12月読了)


★★★

ダイニングバーを友人と共同経営し、愛する妻子とつつましくも穏やかな生活を送る向井聡。

ある日、彼は「あの男たちは刑務所から出ています」とだけ書いてある手紙を受け取った。
向井はある女性と16年前に交わした「誓約」を思い出す。まさか、あの時の約束を果たせというのか―?

過去に罪を犯した人間は幸せになってはいけないのか、というのが作品のテーマ。
犯罪者だった人間が掴んだ幸せを守るため、自分の罪と向き合っていくというお話になってます。

いつも贖罪という同じテーマを扱っている著者の作品ですが、今回も被害者と加害者を描いた薬丸さんらしいお話です。

過去に犯罪を犯したけども今は更生し、愛する守るべき人がいる主人公は、人を殺さなければいけない事態に直面してしまいます。
それは過去に起因する、いわば自業自得ゆえに陥った事態なのですが、そんな状況で人はどう行動するか、著者は容赦の無い筆致でぐいぐい物語を引っ張っていきます。
そして物語は思いも寄らなかった方向へと展開していき、ページをめくる手が止まりませんでした。

こういうお話を読むたびに、自分が同じ立場だったらどうするか考えてしまいます。
加害者だったら、反省しただけで更生といえるのか。
被害者の家族の立場だったら、復讐に目が曇り、まともな判断はできないかもしれない。
事件の加害者は受刑後、社会に出て普通の暮らしを送ることができるけど、被害者には救済がありません。
正解は無いし、重いテーマですが、考え続けていかなくてはいけないな、と強く思いました。

真相は先が読めてしまったし、展開も現実的ではない点があったのでちょっとガッカリでした。

(2019年12月読了)


★★★

高校の写真部に所属する4人の女子高生のそれぞれの視点から語られる短編集。

ハタから見るとキラキラして悩みや葛藤も無さそうな少女たちですが、容姿に自信が持てなかったり、学校や家の居心地が悪かったり、自分らしさを見失ったり、人知れず悩みを抱えています。

人は誰もが悩みを抱えて生きていますが、彼女たちはその若さゆえ、悩みに直面した時、立ちすくんでしまうのです。
自分の悩みが他人より深刻に感じてしまったり。
お互いに思いやる気持ちはあるのにうまく届かず、行き違いが生じてしまったり。
幸せになりたいのに、悩みを自分で作り出してしまう自家中毒な面もあったりして。

そんな彼女たちの繊細な心の動きを、カメラの性質や作用を利用した謎解きに沿って、優しく紐解いていきます。
謎としてはそんなに意外性は無いのですが、少女たちの心の機微の変化には感じ入るものがありました。
自分の気持ちに向き合い、それを受け入れることで、同時に他人の感情の蓋をゆるめることができるのかもしれないな、と思いました。

(2019年12月読了)


★★★★

活字中毒者である三浦しをんさんの書評集。


小説もありノンフィクションもあり、多彩なジャンルの本が紹介されています。

しをんさんの本に対する情熱が紙面から溢れ出ており、圧倒されます。
でも彼女の文章はちっとも押しつけがましいところはなく読みやすい上に抒情豊かなので、とても心地よいのです。
友達のお薦めを聞いているようで、どの本も面白そう。

自分の普段読まないジャンルの本や、タイトルだけでは全く手に取らないタイプの本でも、しをんさんの巧みで熱量の高い紹介文を読むと興味がそそられ、読みたい本が増えてしまいました。

今でも読みたい本が山ほどあるのに、これ以上増えたら困ります…!

(2019年12月読了)
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プロフィール
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sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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