豚がつづる読書ブログ
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★★★
推理作家の香月史郎はある事件がきっかけで霊媒師の城塚翡翠と出会う。
彼女はその能力により殺人事件の犯人を特定できるが、何の証拠もない。
香月は根拠となる論理と証拠を後付けで補い、二人は事件を解決していくが──。
何を書いてもネタバレになってしまいそうなので感想を書くのが難しいです。
小説を読みなれている人なら連続殺人事件の犯人は序盤でわかると思います。
最初から伏線がわかりやすく散りばめられているので、それを拾っていけばおのずと犯人はわかってしまいます。
ですが、はっきり言ってこの作品ではそれは主眼ではありません。
第一話から第三話まで各事件が解決された後、最終話にして真の種明かしが始まります。
一度完成させたパズルが違う形で再構築されていく、これもまた快感と言えば快感。
これを楽しめるかどうかで、この作品の最終的な判断が変わってきます。
わたしは…割と嫌いじゃなかった。ノンストップで読むほどのめりこめなかったけど。
ひとつの物語の美しい集合と離散を余すところなく楽しめる、娯楽作品でした。
(2020年3月読了)
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★★★
皇居のお濠沿いの宴会場・東京會舘を舞台に、大正から昭和、平成にかけて、そこで過ごした人々の思いをつづった連作短編集。
歴史小説と言っていいんでしょうか、東京會舘という「場」の歴史ドラマと、その「場」にまつわる人間ドラマが描かれている作品です。
辻村さんの著作は初期はミステリや青春ものが多く、こういうパターンのお話はこれまでにない試みだと思われるので、新鮮な気持ちで読みました。
大正十一年、皇居のお濠沿いに竣工した東京會舘はわずか十ヶ月で関東大震災により被災。
大正十一年、皇居のお濠沿いに竣工した東京會舘はわずか十ヶ月で関東大震災により被災。
再建後も大政翼賛会とGHQ による二度の接収に遭うという、歴史の荒波にさらされ続けた建物です。
上巻は関東大震災後の大正十二年から、東京オリンピック後の昭和三十九年にかけての五篇の短編となっています。
上巻は関東大震災後の大正十二年から、東京オリンピック後の昭和三十九年にかけての五篇の短編となっています。
五篇のうち三つは東京會館の従業員が語り手のため、「お仕事小説」としても楽しめます。
大政翼賛会に接収される当日の責任者、GHQ接収時のバーテン、初の土産用の箱菓子の開発に奮闘する製菓部長など、お客に寄り添って常に安定したサービスを提供し、そのうえ研鑽を怠らず矜持を持って働く人々。
仕事に対する姿勢についていろいろ考えさせられます。
下巻も楽しみです。
下巻も楽しみです。
(2020年2月読了)
★★★
小学校の野球チームのエースピッチャーである少女アリスは、「大変だ、大変だ」と大慌てで走る宇佐木(うさぎ)という新聞記者を追いかけて、鏡の向こうの世界に迷い込んでしまう。
そこはすべてが左右逆さまの世界。
アリスの好きな野球も、そこでは負け進んだワースト1を決める試合がTV番組で放映され、嘲笑の的となっていた。
野球が笑われ、見下されることに憤慨するアリスは、地元の最弱チームに参加して状況を変えようとするが…。
講談社のミステリーランドというジュニア向けミステリの描きおろしシリーズの1冊。
ジュブナイルとしては説教臭い言い回しもあるので少年少女が楽しめるかどうかは少し疑問ですが、大人の読み物としてはなかなか面白かったです。
何よりもひたむきでまっすぐなアリスの思いがストレートに読み手の心を打ち、アリスを応援しながら素直に読むことができました。
中学では野球をやめるアリス(女子ゆえに野球部では活躍できなくなるので)が、「これが一生で最後だろう」と思いながらバッテリーの兵頭君に球を投げるシーンは、心に響きました!
読後、アリスの今後が気になりました。
選手じゃなくても野球に何らかの形でずっと関わってほしいし、性差を感じることが無いような違うジャンルでも頑張ってほしいですね~。
(2020年2月読了)
★★★
大学休学中の佐田はバイト先で不思議な事件の話を聞くが、実業家と名乗る猫とそれに仕える秘書兼運転手の男がその謎を容易に解いてしまう。
その後も佐田の行く先々で、次々と不思議な出来事と猫のニャン氏に出くわすことになるが──。
事件のあらましを聞いた実業家の猫のニャン氏がニャーニャーと鳴くと、秘書の丸山氏がそれを通訳して事件を解決に導くという風変わりな連作短編集です。
ふざけた設定ですが、日常の謎から密室殺人まで幅広い本格推理モノで、論理的な謎解きもしっかりしています。
派手さやケレン味はないけれど、きっちりと実直な謎解きは安心して読めました。
ただ、猫が名探偵というファンタジー設定がシュールすぎて、最後まで違和感がありました。
秘書の中年男性が通訳の際に語尾に「ニャ」をつけて話したり、猫が謎解きをすることを周囲の誰も突っ込まずに受け入れてたりして、そのリアリティの無さには首をかしげるばかりです…。
猫はただ鳴いてるだけで本当は秘書が名探偵なんじゃないかという疑問が最後までぬぐえず、肝心の謎にあんまり集中できませんでした。
まあ、幽霊や椅子に安楽椅子探偵をさせる作者なので、これもアリなのかな。
推理の途中で飽きて遊びの方に夢中になっちゃう、いかにも猫っぽい描写は可愛かったですが…。
(2020年1月読了)
★★★
二十歳になったアキは百人を配下にした渋谷のチームを解散後、ヤクザや政治家などの裏金を専門に強奪する犯罪プロフェッショナルの仲間になることを決意する。
あらゆるクライム・テクニックを修得するために仲間の柿沢と桃井から様々なトレーニングを受けるアキ。
彼の実戦デビューは成功するのか──。
「ヒートアイランド」第2弾。
アキが犯罪のプロになる成長物語、といったお話で、倫理的にはアレですが中々面白かったです。
裏の顔を作るために戸籍や住所・車を手に入れたり、格闘技や銃の扱いや経済知識を学んだり…。
物語の前半はタイトル通り、一人前の泥棒になるための修行がつぶさに説明されていきます。
この通りに習得したらほんとにアンダーグラウンドのプロになれそうな実践的なレッスンで、読み応えがありました。
最終章はいよいよアキの初仕事、実戦デビューのお話。
ヤクザの裏金を強奪するためにホテルに忍び込んで電源やセキュリティシステムに細工したり、賭場に乱入したり…。
用意周到な準備とド派手なアクションシーンで読者を小気味よく惹きつけておきながら、最終的にはまさかのガムテープ探しというアナログなアクシデントにアキたちは右往左往…というのが笑えます。
この肩すかし感というか、ドラマの緩急の付け加減が絶妙で、読ませる仕掛けが半端ないと思います!
また、前作は魅力的な女性キャラが出てこなくて残念だったのですが、今回は個性的な女性が複数登場したので満足でした。
桃井の昔の彼女、コンパニオンの明美、家出中年女性と、どの女性も、迷いながらも最後には自分の人生を覚悟を持って引き受けていく様子が描かれています。
逆に言えば覚悟を決めた者だけが人生を変えられるのかも…と思いました。
みんな、男性陣よりもカッコよくて、ゲストキャラだけどまた今後も出てきてほしい!と思うほど印象的でした。
ヤクザの柏木の番外編も含蓄のある内容で、すごく面白かったです。
なんか読んだことあるな、と思ったら「人生教習所」の柏木さんなんですねー!!
というか、この「ギャングスター~」の方が先だったんですね…こっちを先に読めばよかったわ…。
(2020年1月読了)
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読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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