忍者ブログ
豚がつづる読書ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



★★★


明治天皇崩御に際し、渋沢栄一ら政財界人は神宮を帝都に創建すべしと主張するが、林学者の本郷高徳らは風土の適さぬ土地に森を造るのは不可能と反論し、大激論となる。
大衆紙の記者瀬尾亮一は神宮造営を調べる同僚に助力するうち、取材にのめり込んでいく・・・。

明治神宮造営という観点から明治時代がどのような時代だったかを紐解いていく物語。
かなり堅苦しい主題ですが、さすがは朝井まかてさん。
一般市民の記者という神宮造営の「外」の視点から専門的なことも噛み砕いてやわらかく語られていくので、読み手も興味をつないでどんどん読み進めていくことができます。

しかもこの主人公の亮一という男、記者という立場を利用して、醜聞をネタに金持ちから金を巻き上げるチンピラみたいな奴なのです。
帝大を中退し大手新聞社をトラブルで辞め三流紙に落ちぶれたという経歴のせいか、仕事のモチベも失い何だかやさぐれている。
そんな亮一が、同僚の活発な女性記者に触発され、神宮造営を取材していくうちに記者魂が目覚めていく。
次第に激動期の日本を支えた明治天皇の生涯に思いを馳せ、独自取材を進めていくようになります。
このへんの描写が非常に巧みで、亮一の心情変化には違和感なく自然に納得できました。

天皇を精神的支柱として敬い親しんできた民衆の思い。
そして、近代国家へと変貌する時代の流れに添い、前例のない天皇としての役割を課され、苦悩しながら模索していく明治天皇の姿。
天皇とは何か、日本人にとって天皇の存在はどういうものなのかという、現代においても問いかけられる命題に真正面から取り組み、その正体をあらわにしていく作者の手腕には鳥肌が立ち、言葉にならないほどの感銘を受けました。

明治神宮という美しい森が歴代の人々の努力と熱意によって作り上げられた事と同じように、今の日本人の根幹も同じ経緯でを築かれたのだと、気づかされました。

(2020年8月読了)
PR


★★★

ピアニストになる夢を諦め、検察官を目指し猛勉強の末、司法試験に合格した天生高春。

天生は司法修習所でトップ合格者と噂される岬洋介と同じグループに割り当てられる。
世間知らずで危なっかしい岬のフォローに回る天生は、岬の秘密を知ってしまう。
そんな折、二人は修習の一環でとある殺人事件の取り調べに立ち会うが・・・。 

岬洋介の司法修習時代を描いたお話。

過去の岬シリーズ同様、謎解き部分はありきたりで物足りないです。
ですが、これもいつもと同様コンクールでの演奏描写が圧倒的で、一瞬で惹きこまれました。
(ミステリよりも音楽描写の比重をもっと増やしてほしいぐらい…)

また、天生を中心とした、脇を固めるキャラクターたちとの岬のやりとりも楽しかったです。 
ピアニストを諦めた凡人の天生と、天才的な岬の対比はまるでサリエリとアマデウスなのですが、あまりにも世知知らずで天然な岬のフォローに回るうちに嫉妬心が消えてしまう、天生の損な役回りは微笑ましいものがありました。

そして、進路に迷いを感じる岬に対しての高遠寺静教官の言葉にも深みがあり、考えさせられました。
「仕事の価値は自分以外の人間をどれだけ幸福にできるかで決まるのだ」。
自分はそれだけの仕事をしているかな・・・と思わず我が身を振り返りました。
さすが中山七里さん、心を刺してきますね笑。

(2020年8月読了)


★★★★

女名前を許され、7代目店主として江戸に出店した幸。
帯の巻き方も着物の柄の好みも、上方とは違う江戸のやり方に幸たちはとまどう。
しかし、「帯結び指南」という新しい試みをはじめたり、伝手をたどって歌舞伎役者の弟子の稽古着を仕立てたりと、少しずつ商いを軌道に乗せていくが…。

とうとう江戸に進出したものの、常識も考え方もまるで違う江戸での商いは順風満帆というわけには行かず、いろいろ試行錯誤していく幸たち。
知恵を絞って商いの工夫をするのはもちろんのこと、ひとつひとつの小さな商いも疎かにせず誠意を持って対応していく中で、その誠意が次の大きな商売につながる様子がじっくりと描かれていきます。

後継者問題や、五代目惣次の影が再び登場したりと、不穏な空気がちょっと姿を見せていますが、終盤、新しい挑戦が大きな波に乗りそうなところで次巻へと続く展開になります。

今回、何度も目頭が熱くなりました~。
糸から布を織り、型付け、染めなどの途方もない工程を経て一つの着物が作られること、そしてそれに関わる職人たちの矜持が語られ、その凄みには鳥肌が立ちました。

そして、智蔵が引き寄せてくれた富五郎との縁…。
死んでもなお、縁を繋いでくれて幸を支えている智蔵。
他人の心にとどまり続けているうちは、肉体は滅びても生きてるのと一緒ですよね。

そしてそして、個人的に大好きなのは女衆仲間として苦楽をともにしたお竹どんが、幸の片腕として成長していく姿です。
「一生、鍋の底を磨いて過ごす」というただの商家の女衆だったお竹が、帯結び講座で中心となって動いたり、商いのアイディアを出す手伝いをしたりと、きちんとビジネスの前面に立って頑張ってる姿はとっても小気味いい。
幸との信頼関係も読んでて楽しいし、これからの成長が楽しみです。

(2020年7月読了)


★★★

元警察犬のジャーマンシェパードを飼うことになった共働きの池上夫婦。
初めて犬を飼う夫婦の日常と、周囲で起きるさまざまな事件を描いたミステリ連作短編集。

躾もきちんとされてて賢いけど、人懐っこくてちょっと臆病な元警察犬のシャルロットがとにかく可愛くて、わんこかわいい~愛しい~!って読んでたらすぐ読み終わっちゃいました。

もちろん可愛いだけではなく、飼い主同士の暗黙のルールや犬の習性を理解した上でのしつけの重要さ等々、犬を飼ったことのない私には初めて知ることばかりで、新鮮でした。
動物を飼うことの責任の重さや、動物を利用し改良してきた人間の歴史などなど、人間のエゴについて考えさせられるエピソードも多かったです。

「飼う」ことはどういうことなのか、人間はどうすべきなのか、正解はひとつでは無いでしょうし、考え続けていかなきゃいけない問題なのでしょう。

子育てとは似て非なるものなんでしょうね~。
自分の想像の及ばぬ世界を垣間見ることのできる…小説を読むことって、やっぱ楽しいな。

(2020年7月読了)


★★★★

母と娘、姉と妹…人間同士の軋轢が認知の歪みを増大させ、大きな事件を引き起こす。

6篇からなる短編集。

一番印象に残ったのは、表題作の二篇、「ポイズンドーター」と「ホーリーマザー」。
対を成すこの二篇は、前者が「娘」視点、後者が娘の友人が語る「母」の立場から語られています。

異なる視点で語られることにより「真実」がガラリと反転し、物語が立体的に見えてくる…という、ありがちな話なのですが、女性なら誰でも思い当たる醜い感情を引っ張り出してきて、読み手の眼前に突きつけ、執拗に気持ちを抉ってくる作者の手腕には震えます。

母が良かれと思って娘のためにやったことが、娘にとっては独善的で押し付けのように感じたり。
自分の抑圧状態に無自覚な娘もいれば、自分の人生がうまくいかないことを母のせいにして被害者ぶる娘もいたりして。

どちらにもそれなりの正義があり、正しさだけでは測れない人間関係の繊細さ・脆さをはらんでいるように感じます。

こういう話って、読み手の立場や年齢によっても見え方・捉え方は違ってくるので面白いんですよね~。
10代の頃に読んだら、娘の方に肩入れして読んでしまうと思うし。
母親も娘も、どちらも経験した人にとっては、子どもの立場では見えなかった景色が見えてしまうでしょう。

母親は娘を育てるという立場上、圧倒的強者であるのでどうしたって対等ではないんですよね。
しかも、母娘と言えども他人なので100%の相互理解はハナから無理だと思うのですが、「親子だから理解しあえる」と期待した分だけ叶わなかった落胆が大きい。
「家族だから言わなくてもわかるだろう」という言葉の出し惜しみが取り返しもつかないディスコミュニケーションを生むというのは現実にもよくある話で、そのあたりが誰にでも起こりうるリアルとして読み手に容赦なく迫ってきます。

ラストの、「母とか娘とか、くだらないよね!」と、毒親の概念から放たれよう、超えていこうとする理穂の姿勢が好き!

(2020年3月読了)
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
フリーエリア
最新TB
プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析

Copyright © [ 豚は無慈悲な夜の女王 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]