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豚がつづる読書ブログ
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注文の多い美術館 美術探偵・神永美有 (文春文庫) 注文の多い美術館 美術探偵・神永美有 (文春文庫)
門井 慶喜

文藝春秋 2017-08-04

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★★★

舌に甘みを感じるか苦みを覚えるかで美術品の真贋を見分けることができる美術コンサルタント・神永美有が活躍する美術探偵シリーズの3作目。


前作同様、美術探偵の神永とワトソン役の美大准教授・佐々木のコンビが遭遇する美術品の真贋を巡って右往左往するという、美術ミステリ短編集。

作者の多彩な知識(というかうんちく)から成る、余裕のある語りに身をゆだねて読み進めれば、一度のみならず二度も覆される珍説の応酬に心おどる…というのがこのシリーズの楽しみ方なのですが。
でも今回はその鑑定の過程にこじつけが多く、短編の多くが仮説で終わってしまい、真贋がよくわからずに物語が閉じてしまうのでスッキリしませんでした。

佐々木教授や、教え子のイヴォンヌのキャラの立ちぶりは板についていて見事なのですが、人物造形に深みはあまり感じられません。
美術品を持ちこむゲストの登場人物に、その美術品にまつわる過去の思い出や思い入れがあり、真贋がわかることによって何かしらの解を得る・・・という話を期待していたので(前作がそうだったので)拍子抜けでした。

佐々木教授の恋路がベースとなる短編が多いのでコミカルで軽いお話になっているのかもしれません。
(40男のシリアスな失恋話なんて読みたくないもんね・・・)

歴史ネタと組み合わせて描けばまだまだネタはあると思うので、次回に期待します!

(2017年12月読了)
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かたづの! (集英社文庫) かたづの! (集英社文庫)
中島 京子

集英社 2017-06-22

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★★★

江戸時代にたった一人、奥州南部藩に実在した女大名の祢々(後に清心尼)を主人公にした歴史時代小説。
祢々は八戸南部氏の当主・直政の妻となるが、夫や幼い嫡男が不審な死をとげる。
これはかねてより八戸を狙っていた叔父の仕掛けた陰謀だと確信した祢々は城を継ぎ、女亭主となった。
その後も叔父の策略によって次々に襲いかかる難事に翻弄される祢々の長い闘いが始まった―。

中島さん初の時代小説。
実在した女大名を描いた物語ということで面白そうだなと思って手に取りましたが、読んでみてびっくり。
なんと語り手は祢々のそばに寄り添うカモシカで、死んで角だけになっても「片角(かたづの)」として彼女を助けるという存在。
遊び心が効きすぎたぶっとんだファンタジー要素におののきながらも、読み進めていくうちにすぐ夢中になりました。

多くの困難に直面しながらも祢々は領土と領民を守るため、悩み苦しみ、時に毒づきながら、たくみな手腕で難事を乗り切っていきます。

「戦でいちばん重要なのは、戦をやらないこと」
「戦いが起きてしまったら勝つのではなく負けぬことであり、なるべく傷が浅いうちにやめること」

領土と領民を守るために語られる彼女のこの信条は現代でも実現が難しいものであり、子どもを産むことができる女性ならではの考えだと思いました。
藩内の争いが激化して一触即発の危機を迎え、血の気が多い武士たちは争いを起こすことですぐに死に向かおうとします。
「何でもいいから思う存分叩きたい」「戦いで死ぬのは本望 。自分が討たれることで新しい筋道が立つのであれば、それを大義として死んでもいい」などという男性ならではの荒い理屈には辟易しましたが、それは領土問題や差別問題に揺れる現代日本の姿そのもので、考えさせられました。

彼女に降りかかる艱難辛苦は過酷すぎて、読んでいてつらくなってきますが、河童や大蛇などの伝奇的なエピソードが随所にはさみこまれているので軽妙でユーモアあふれる筆致になっています。
史実や伝説を交錯させて、不可思議な世界で遊ばせてくれるので飽きません。

また、彼女の一生は男たちに翻弄されるものでしたが、耐えて忍んで…という印象ではなく、さっぱりとした、感情的にならない少年のような気質なので、読んでいて気持ちいいんですよね。
友達になりたいくらい笑。

「片角」が最終的に辿り着いた世界で見つけたものは――読み手もまた最後に不思議な伝承あふれるみちのくに誘われ、深い余韻に浸ることができます。

(2017年10月読了)
アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫) アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)
伊坂 幸太郎

幻冬舎 2017-08-04

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★★★

妻子に突然逃げられて落ち込むサラリーマン、元いじめっこと思わぬ形で再会した元いじめられっ子、電話だけで繋がりあった男女、日本初のヘビー級ボクシングチャンピオンを巡る周囲の人々。

それぞれの人生を軽いタッチで切り取った全6篇からなる連作小説。

6篇の連作は独立したお話になっていますが、登場人物が少しずつ重なっていたり、共通のエピソードが出てきたりと、全体を通して楽しめる作品となっています。

冒頭の2話は、著者がファンであるというミュージシャンの斉藤和義の新曲のために書き下ろされたものだそうで、作中には「斉藤さん」なる人物も出てきます。
この「斉藤さん」がいかにも斉藤和義らしい立ち振る舞いをするので、ファンとしてはニヤニヤしちゃいました。

伊坂さんには珍しく「恋愛」にまつわる連作なのですが、丁寧な日常描写によって露わになるテーマにはしみじみと感じ入りました。
人の数だけ出会いがあり、それぞれの触れ合いに無数の笑いやかなしみが生まれる――と作者は教えてくれてるのかなと思いました。

(2017年9月読了)
クール・キャンデー (祥伝社文庫) クール・キャンデー (祥伝社文庫)
若竹 七海

祥伝社 2000-10-01

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★★★★

誕生日と夏休みの初日を明日に控えた中学生の渚は胸を弾ませていたが、思いがけない事件が起こる。

ストーカー被害に遭った兄嫁が死に、さらにそのストーカーも変死したのだ。
警察が兄を殺人犯と疑っていると知り、渚は家族の無実を証明するため奔走する。
果たして、殺人事件の真相は…。

主人公の渚の一人称で中学生らしい日常が描かれ、青春小説のようなテイストで物語は進んでいきます。
同級生の男の子との淡い恋や、複雑な家庭で育った彼女の屈託も可愛らしいなあと思いつつ、軽いノリでさくさく読めちゃいます。
生意気でどこか冷めている渚ですが、家族の疑惑を晴らすために奮闘する様はとても一生懸命で心打たれました。
憎めないキャラで、友達になりたいなあと思わせてくれます。

終盤、伏線が回収されていき、まさかまさかの結末…。
ラストにはびっくりさせられた人も多いんじゃなかろうか。
薄々予想はしていたものの、横からいきなり刺されたかのような衝撃。
ラストの一文のために書かれた小説といっても過言ではありません。

最後までたくらみに満ちた作品。
夏の終わりに読んだのですが、けだるい暑さから一気に氷点下の気分を味わえるという、夏ぴったりのお話でした。

(2017年8月読了)
貴族探偵対女探偵 (集英社文庫) 貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)
麻耶 雄嵩

集英社 2016-09-16

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★★★

貴族探偵シリーズ第2弾。
使用人たちに推理をさせる優雅な高等遊民「貴族探偵」に、新米女探偵高徳愛香が果敢に挑む。
事件を解決できるのは、果たしてどちらか。

推理などという〈雑事〉はすべて使用人任せという斬新な探偵ミステリですが、この続編では女探偵との推理バトルものとなっています。
行く先々で事件に遭遇する女探偵が誤った推理をし、ことごとく貴族探偵(の使用人)に真相を喝破されるという毎度のお約束展開にちょっと冗長を感じつつも、凝った説がいくつも披露される推理合戦は単純に面白かったです。

ものすごいトリッキーな趣向を取り入れたお話もあり、無理矢理な推理と感じてしまうお話もあり、中々アクロバティックなミステリ短編集でした。

論理的な推理をぞんぶんに楽しめるという点では素晴らしい作品です。
推理には影響のない、脇役の妙なキャラ立ちも気になりました。

独特の味を醸し出している作家さんなので、たまに無性に読みたくなります。

(2017年9月読了)
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プロフィール
HN:
sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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