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豚がつづる読書ブログ
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桜宵 (講談社文庫) 桜宵 (講談社文庫)
北森 鴻

講談社 2006-04-14

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★★★★

三軒茶屋の裏路地にあるビアバー「香菜里屋」シリーズ第二弾。


前作にも増してマスターの作る創作料理がとてもおいしそうで、読んでいて舌鼓を打ちました。
料理の音や匂いまでも精緻に再現されていて、五官をフルに刺激する表現力が素晴らしい。
おなかがすいているときに読むもんじゃないですね~。

連作短編集なのですが、前作よりも舌に残る苦さが印象的なお話ばかり。
人間の嫌な部分を凝縮して見せつけられるので、読み進めるたびに胃もたれしていく気がしました。

読みやすいのでさらさらと読んでいけるのですが、じわじわ露わになる人の悪意には恐怖をおぼえるほど。
人と人との関係の中での容赦のないすれ違いが凄まじく、心を抉られました。

表題作の「桜宵」も一見いい話ふうではありますが、よく考えると死者の置き土産はとんでもなく重く、その後の展開は推して知るべし、という感じです。

(ラストに到着するのが目的なのかと思われる)ラストありきの強引な推理もあり、その辺がちょっとマイナス。
でも人の心の機微を描かせたら一流だと思うし、推理以外の魅力もあるので読みごたえがありました。

(2018年1月読了)
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花の下にて春死なむ (講談社文庫) 花の下にて春死なむ (講談社文庫)
北森 鴻

講談社 2001-12-14

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★★★★

三軒茶屋にある小さなビアバー「香菜里屋」。

客によって持ち込まれるさまざまな謎を、マスターの工藤が鋭い推理と穏やかな語り口によって解いていくという安楽椅子探偵形式の連作短編集。

一番良かったのは、表題作「花の下にて春死なむ」。
孤独死をした老俳人の片岡草魚は戸籍を持っておらず、過去や身元が一切不明だった。
俳人仲間の飯島七緒は、片岡との会話や残された日記を手がかりにして彼の故郷を探し始めるが…というお話。

片岡草魚の知られざる過去をあぶり出していく鮮やかな展開もさることながら、心の柔らかいところをそっと触れられたような静かな読後感が印象的。
どちらかというと謎解きよりも、ままならない人生の悲しさと温かさを同時にすくいとることに重きを置いているように感じました。

また、推理はするものの真実が最後まで明らかにならない短編もいくつかあります。
憶測で終わっているので正直ちょっとモヤモヤしましたが、推理は推理であって人を不幸にするために推理をするわけではないとマスターは考えているのかなと思うと、納得できましたね。想像ですけど。

「香菜里屋」に行ってマスターに話を聞いてもらい、彼の作った料理を食べてみたい・・・。
この作品を読んだら、誰もがそう思うんじゃないかな。
美味しそうな料理とマスターの巧みでさりげない謎さばきを肴に一杯やってみたいものです。

(2017年6月読了)
政と源 (集英社オレンジ文庫) 政と源 (集英社オレンジ文庫)
三浦しをん

集英社 2017-06-27

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★★★

荒川と隅田川に挟まれた中州のような墨田区Y町に住む政と源。
銀行員を定年退職した堅物の国政と、つまみ簪職人のいい加減男・源二郎は同じ73歳。
正反対の性格をした二人はどういうわけか離れずにこの年までつき合ってきた。
下町を舞台に繰り広げられる、二人を中心とした人情物語。

政と源の掛け合いが面白く、テンポの良い文章であっという間に読了しました。
予定調和な展開にちょっと物足りなさも感じましたが、老いの孤独や人生の悲哀も描かれていてホロリとさせられます。

奥さんに家出された国政は一人寂しく暮らしていますが、源二郎は通いの弟子の徹平とにぎやかに暮らしています。
源二郎の賑やかな生活を嫉妬し僻む国政ですが、何歳になってもそういう感情は無くならないというのがリアルで人間らしいと思いました。
彼が妻にちゃんと向き合った時には、もう遅く取り返しがつかないのが切ない。
所詮、生きていくのも死んでいくのも一人だと感じさせてくれましたが、だからこそ一時でも悲しみも嬉しさも分かち合うことの尊さを教えてくれます。

何も言わなくても同じ空間で過ごしてくれる友達がいて羨ましい。素敵な二人のお話でした。

(2018年1月読了)
カエルの楽園 (新潮文庫) カエルの楽園 (新潮文庫)
百田 尚樹

新潮社 2017-08-27

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★★★

故郷を捨て、楽園を求めて放浪するアマガエル2匹は平和な国「ナパージュ」に辿り着く。
そこではツチガエルたちが三戒と呼ばれる奇妙な戒律を守って暮らしていた。
争いもなく食物も豊富な夢のような国だと思われたが、やがてウシガエルたちが侵入を始めて・・・。

日本の歴史、現在の日本の置かれている状況を風刺した作品。

寓話というにはあまりにもあからさまで、すぐに何を示しているかわかってしまいます。
三戒は憲法9条、ナパージュは日本、ヌマガエルは在日朝鮮人、等々。

作者の政治的主張がダイレクトに表現されている偏りのある小説ではありますが、日本の現状を俯瞰してわかりやすく描いているので考えさせられました。

あくまでも9条は日本国内の法律であり、9条さえあれば日本は平和なのだという意見はただの平和ボケなんですね。
かといって軍備増強や核武装にも違和感を覚えてしまうのですが・・・。
マスコミの偏向報道や集団心理の恐ろしさも再認識できました。

興味のとっかかりとしては、最適な小説でした。
百田さんの身が心配ですけど。こんな内容の本を出版して大丈夫かな・・・。

(2017年10月読了)


★★★★

「ランチのアッコちゃん」の続編。
アッコちゃんこと黒川敦子女史がメインで登場する前半2篇と、カメオ出演程度にちらっと登場する後半2篇という構成の連作短篇集。

正直、前作の「ランチのアッコちゃん」の内容を忘れかけていたので、この本の最初のうちはライトなお仕事小説だな、と思いながら読み進めました。
いま流行の、「恋も仕事も全力投球、仕事を通じて最後には何かを得ることのできるスイーツ成長小説!」ってやつでしょ、って。舐めてました。すいません。

お仕事小説という印象は変わらないのですが、アッコさんの想いがしみじみと沁みこんでくる滋味に富んだお話でした。

わたしが印象に残ったのは、「メトロのアッコちゃん」というお話。

ブラック企業に勤める主人公・明海は心身ともに限界。
地下鉄のジューススタンドの店員のアッコさんに毎日強引に野菜のスムージーを渡されます。
最初は嫌がっていた明海ですが、スムージーを飲むことで、少しずつ自分を取り戻していくのです。

スムージーを毎日飲んだからって、人生はいきなり変わらない。
そんなことはわかってます。そんなんでうまく行くんなら、ファンタジーです。
アッコさんもそのことをはっきり言ってくれます。
「朝食をちゃんと食べたからって、人生は変わらない。そんなもの自己満足で、誰かに評価されるわけでもない。
でもどうせ仕事をしなきゃいけないんだったら、誰かの役に立ちたいの」
そうなんですよね、と大きく頷きました。
誰かの役に立ちたい、そこに仕事の意味を見出してもいい。
誰かの役に立つことで自分が救われるなら、それでもいい。
偽善とか欺瞞だって言われてもいい。そういうやつは言わせておけばいいのです!
なーんて、目頭が熱くなってしまいました。

不全感で縮んだ自我を肯定してゆく過程を描く、女性が共感できるお話ばかりでした。
働く女性にお勧めの1冊です。

(2017年12月読了)
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プロフィール
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sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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