忍者ブログ
豚がつづる読書ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 

★★★

元経団連会長が主催し、そうそうたる団体や企業が後援する「人間再生セミナー 小笠原塾」。
募集広告を目にして集まった個性的な人々は人生の再起をかけ、それぞれの思いを抱いて参加する。
果たして彼らは人生をやり直せるのか。

人生に行きづまった人たちが小笠原で自己啓発セミナーを受ける。
その美しい自然と数奇な歴史に触れることによって、登場人物たちは少しずつ変わっていく。
それだけの話なのですが、妙に心に残るものがありました。

前半は人生の成功確率論や人生の目的設定、自己認知などのセミナーの様子が淡々と描かれ、後半は小笠原の歴史と共に生きた島民たちの体験談が語られていきます。

セミナーを受けただけで人の気持ちはそんなにすぐ変わるものではないと思いますが、気づきを得て少しずつ変容していこうとする登場人物の心の動きは気持ちよく、何だか嬉しかったです。

物語の力点は自己啓発セミナーの内容や小笠原の歴史に置かれているので、キャラクターの絡ませ方やエンタメ小説としての緩急はイマイチだったかな。

でも、年齢は関係なく、心持ちが若い人の再出発を見るのは(読むのは)、いいものですね~。

(2019年1月読了)
PR


★★★

尾張藩の若き藩士・榊原小四郎は利発で学問にも優れ、出世をめざし職務に励んできた。

しかし、才気をひけらかした態度が災いし上司に疎まれ、国もとの御松茸同心に左遷されてしまう。
悄然として国に移る小四郎だったが、慣れない山歩き仕事に右往左往するばかり。
果たして、小四郎の出世の夢はかなうのか。

面白かったです。
現代日本にも通じるお話なので、身近に感じられました。
小四郎は生まれてこの方ずっと不況しか知らないのですが、周囲のオッサン達はかつて尾張に訪れたバブルが忘れられず、その話ばかり。
私の周りにもこういうオッサンはまだいます笑。

松茸の不作続きの要因を調べ収穫量を上げるというお仕事を拝命したわけですが、小四郎は現実に叩きのめされます。
松茸献上のノルマが毎年課されているが、山の松茸では到底足りないので御用商人から買い上げて補填しているという矛盾。
財政赤字は増える一方なのに、何もできない自分。
融通の利かないカタブツの小四郎は、山廻同心には邪険にされ、立場の違う村の平民にも松茸についてうまく聞き出せず、誰の助力も得られない。
しかも都会育ちの彼は虫も大嫌いで山仕事なんかしたこともない。

可哀想になるほど八方ふさがりの状態ですが、小四郎はかすかな出世の道をあきらめず、増産を目指しこつこつと資料を読み試行錯誤していきます。
最初は鼻持ちならない青臭い青年だった小四郎は、苦労を重ね、やがて周囲の助けを得て視野を広げていくのです。
その様子は現代の青年の成長を描いたお仕事小説を読んでいるようで、すがすがしい気持ちになれました。

納得のいかない仕事に異動になっても、腐らずに目の前の仕事に励むことって大事ですよね。
骨身に沁みる教訓だと思います。

先代宗春公や父親に対しての気持ちが変化していくのもほっとさせられました。
結構堅い話ですが、ユーモアにまぶされて読みやすいので時代物が苦手な方でも楽しめると思います。

(2019年1月読了)


★★★

死んだ妻に会うために霊現象探求所を構えている真備。

真備とその助手の凛、売れない作家の道尾が様々な事件を解決していく。

真備庄介シリーズの短編集。
前作のように霊現象を探究するようなエピソードは無いけども、真相から読者の視線を逸らして誤った方向に促し、最後に謎が解かれた時にものがなしい物語が浮かび上がる、というミステリのようなサスペンスのような、「奇妙な味」が冴えわたる短編集となっています。

一番心に残ったのは最後に据えられた「花と氷」。
優しい余韻を残す、作者のまなざしが暖かいお話でした。
弱く哀しい人間心理を鮮やかに紐解いて見せる手腕が見事で、上質なミステリへと昇華させています。

真備庄介シリーズはこの3冊までで、10年も新作が出版されていません。
このシリーズは「探偵と助手が主人公のホラーミステリ」という一定の枠の中で展開するストーリーなので、多分、作者は枠にとらわれない色んなテーマや構成の作品を描きたいから新作が出ないのかな?と思うのですがどうなんでしょうか。
私はこのシリーズが好きなので、いつか続きを読みたいです。

(2019年1月読了)


★★★

トランスミッションの開発に乗り出した佃製作所。
帝国重工の財前が立ち上げた新たなプロジェクト、無人農業ロボット開発にもエンジンとトランスミッションを供給することになるが、その挑戦は前途多難な道のりだった…。

「下町ロケット ゴースト」の続編。

無人農業ロボット開発のためにトランスミッション研究に乗り出した佃製作所ですが、またもや様々な試練に晒されます。
佃を裏切ったギアゴーストはダーウィンという無人農業ロボットを開発することが明らかになり、帝国重工(佃製作所)vs下町の中小企業(ギアゴースト)の構図に。
しかし帝国重工の社内政治によって佃製作所がプロジェクトから外される危機もあり、複雑な様相を呈していきます。

結構、状況が難しくなってくるのですが、わかりやすい文章でテンポ良く進んでいくので自然とストーリーが頭に話が入ってきます。

また、佃製作所のものづくりの技術力とその誇りは素晴らしいと思うのですが、それだけではなく、佃社長の言葉にもいつも感服させられます。
佃社長は技術によって人の生活を便利にしたり人を幸せにしたい、ひいては世の中に貢献したいという強い思いを持っているんですよね。
その熱い信念が人の気持ちを動かし、今作でも野木教授、島津、殿村の父を説得していきます。
もちろん、技術に自信があるからこその説得力なわけですが、私はすごく強い言葉の力を感じます。
技術がいくら高くったって、それがきちんと人に伝わらなければ宝の持ち腐れですよね。
佃社長はものづくりに対する情熱、技術力、伝達力、すべての力を持っているので、経営者として素晴らしい!
こんな社長の下で働きたいです…。

お決まりの大団円にも納得の読み応えでした。

(2018年12月読了)


★★★★

東京都西多摩でバラバラ死体が発見され、岩楯警部補は山岳救助隊員の牛久とペアを組み捜査に加わった。
捜査に協力する法医昆虫学者の赤堀涼子は、死体に付いたウジの生育状況から死亡推定日を割り出す。
しかしそれは司法解剖医が出した推定日と食い違っており、否定されてしまう──。

法医昆虫学捜査官シリーズ四作目。
今作も前作と同様に、死体に付いた虫のわずかな手掛りから事件の糸口を見出し、解決に導いていくという異色の警察サスペンスです。

ちょっぴりエキセントリックな言動で周囲を困惑させる赤堀ですが、まだ警察捜査方法として確立・信頼されていない法医昆虫学を認めてもらうために、地道で膨大な作業をこなし、仮説と検証を繰り返す様子には学者としての意地と底力を見せつけられたようで、感心しました。

一方で、岩楯警部補は現場の村で聞き込みを始めるわけですが、怪しい人物がいるものの終盤まで被害者の身元も犯行動機も特定できません。
そんな、捜査が遅々として進まない様子がリアルな臨場感を演出しており、迫力がありました。
いつものように岩楯と赤堀の掛け合いも楽しく、抜群の安定感でした。

また、終盤明らかになる、余人の想像を絶する苛烈な真相には思わず戦慄。
常人の理解を寄せつけない歪んだ欲望には、非道な世界への拒絶と愛する者への帰依を感じます。
一線を越えてしまった人間の狂気と執着をまざまざと見せつけられ、何とも言えない後味の悪さが残りました。

ただただ、面白かったです!

(2018年12月読了)
カレンダー
12 2026/01 02
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新TB
プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析

Copyright © [ 豚は無慈悲な夜の女王 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]