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豚がつづる読書ブログ
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★★★

京都一の貧乏寺・嵐山の古刹大悲閣の寺男、有馬次郎に奇妙な事件が持ち込まれる。

元広域窃盗犯の有馬の直感は鋭く、新聞の記者の折原けいや住職の助言も得、時には裏社会の情報を利用しながら事件を解決していく。

ミステリーですが、かなりコミカルでユーモアたっぷりの連作短編集。
どの話も京都ならではの文化や料理がキーになっているので興味深いです。

非現実なトリックやロジックを使った脱力してしまいそうになるバカミスの話もあるので、物足りなく思う人もいるかも。
「異教徒の晩餐」や「支那そば館の謎」のトリックはどうなんだろう…私はあまり納得できないな~。

大悲閣は実在するそうなので、いつか行ってみたいです。
素材を生かした季節感のある京料理の描写もおいしそうで、読んでいて唾液が出まくりました。

(2019年3月読了)
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★★★★

肉体的あるいは精神的に隷属状態に置かれた人々を描いた短篇集。


とにかくぞくぞくしました。
面白いと言うのは不謹慎かもしれないけど、こんな気持ちにさせてくれる桐野夏生という作家はやっぱり稀有な存在だと思います。

さまざまな時代や設定の中で、奴隷として抑圧状態に置かれた人やその周囲の人を描いていますが、自分の抑圧状態に無自覚な人もいれば、脱出しようと戦おうという人もいます。

暴力によって肉体的に支配される女性を描いた話はとんでもなく苛烈で、過去だけではなく現在でもこのような扱いを受ける女性がいるのだろうと想像するのもおぞましく、反吐が出そうになりました。

精神的に搾取され続ける女性の地下アイドルの話も痛々しかった…。
作中ではアイドルが「キモオタ」に消費されいつかは見向きもされないであろう未来を暗示しており、人間の尊厳を削り取っていく歪んだ構造に寒気がしました。

よく考えたら、人間が二人以上いたら支配と隷属は必ず存在し、それは人間社会の構造上当たり前のことなのかもしれません。
現代日本でも精神的な抑圧は至るところにあって、今の隷属状態から抜け出してもまた別の何かに支配されるかもしれないし、生き続けてるだけで「地獄巡り」みたいなものなのかも。

世界に搾取され続ける人がいることに目を背けず、小説で描くことで絶えず訴え、現代社会を照射し続ける桐野さん。
多分、自分が社会に受けた怒りが小説を描く原動力になっているのかな。
私はデビュー以来桐野作品の登場人物にずっと共感してるし、自分の気持ちを代弁してくれてると思ってます。
桐野さん、大好き…いつまでも作品を追って読んでいきたいです!

(2019年2月読了)

★★★

美術品犯罪に対応する警視庁捜査二課の美術犯罪捜査班。
詐欺ビジネスが疑われる美術品販売会社を相手に、美術知識ゼロの新米刑事と美人女性上司が違法スレスレの悪だくみを暴こうとする。
両社の対決はどう決着するのか――。

門井慶喜の美術ミステリ・神永美有シリーズが面白かったのでそれを念頭に読んだのですが…ちょっとガッカリしました。

美術うんちくはかなり神永シリーズよりも控えめに説明されるので読みやすかったです。
漫画的なキャラが漫画的に行動し、さらに読み口を軽くしています。

面白さを感じた点もたくさんありました。
美術品の価値を決める要素が逆説的に作用してしまうという皮肉的なおかしさ。
絵を描いた当人によって真作が贋作に転じ価値観の反転をはかるという、人を食った展開。
芸術に金銭的な価値をつけることの妥当性を読み手に問いかけるかのような挑戦的な姿勢。

難解でとっつきにくい「美術」の世界を題材にしながらも、敷居を低くして読みやすくしようと心がけていると思われるのですが…モナリザを知らないアホな刑事(よく公務員試験に受かったな…)が無鉄砲に行動する展開はトゥーマッチすぎて脱力しました。
コミカルが過ぎてギャグになっちゃってると言うのかな。

その上、スリリングで読者を高揚させる章もあったのに、最後の章がいろいろ乱暴すぎて閉口しました。
捜査対象者が刑事の〇〇なのもおかしいし、〇に訴えて犯罪を防ごうとするのも変。
絵を〇〇〇ことを〇〇〇のもありえない。
伏字だらけになっちゃったけど。

こんな子供騙しのような話の帰結、読者を何だかバカにしてるのかなと思ってしまいます。
わかりやすく読みやすい、売れる小説を編集者から求められるのだろうけど、読み手もそんなバカじゃない。
美術犯罪捜査班なんてタイトルの本を手に取る時点で、読者も少しは美術に興味を持ってるだろうから、こんな浅い内容は期待してないと思う。

もっと違うやり方で料理すれば面白くなるのに、惜しい作品でした。

(2017年6月読了)


★★★

夏流城(かなしろ)での林間学校に参加した光彦と三人の少年を迎えたのは、首を折られた四本のひまわりだった。

不穏な空気が漂う中、光彦は茂みの奥に鎌を持って立つ誰かの影を目撃する。
閉ざされた城で、互いに疑心暗鬼をつのらせる卑劣な事件が続き…、彼らは夏の城から無事に帰還できるのか。

「七月に流れる花」と同時期に城の反対側にいた少年たちのお話です。

「七月に~」を先に読まないと楽しめないので、読む順番を間違えないように冒頭に書いておいてほしいです。
事前情報を持たずに読む方も多いと思うので、そういう配慮は必要なのでは…。
「七月~」では解明されなかった謎もこちらでは明らかになったので、セットで読むことをお薦めします。

通奏低音のように流れる不穏な雰囲気は「七月~」と同じですが、前作が何となくリリカルなひと夏の寓話めいていたのに対し、こちらは冒険譚のような、少し戦闘的な感じ。
やはり少年と少女の違いでしょうか。

それにしても、同じ状況を描いている話なのに、登場人物の置かれた立場によって話の表情が変わるのが面白かった!
見る方向や立場によって全く別の様相が現れていくので、読んでいて飽きなかったです。

最後、通過儀礼を経て大人に近づいた彼らの後姿は頼もしく、眩しい。
この本でミステリーランドのレーベルも完結となるそうですが、少年少女がその時代を卒業していくという、レーベルとしても最後にふさわしいお話になってました。

(2019年2月読了)


★★★

夏流(かなし)に転校してきたミチル。

転校が六月という中途半端な時期だったのと内向的な性格のため、友達が出来ないまま夏休みを迎えたが、彼女のもとに奇妙な「林間学校」への招待状が届く。
呼ばれた子どもは必ず行かなければならないという夏の城で、ミチルと5人の少女たちは不思議な夏休みを過ごすことになる…。

講談社のミステリーランドシリーズの配本なので子ども向けの小説ですが、往年の恩田陸の味付けがなされた、ザ・恩田ワールドなお話でした。
物語を包むノスタルジックで不穏な空気、謎を煽りまくる思わせぶりな演出、静謐で賢い主人公が直面する物悲しい真実。
まさに「恩田さんのいつものやつ」、久しぶりに読んだ気がするわ~!

作品の冒頭、全身緑色の謎の「みどりおとこ」が現れ主人公に迫るところから物語はスタートします。
夏の城に集められた少女たちは、水路に流れる花を観察し記録する、鐘が3回鳴ったらお地蔵様の所に集まる、などの妙なルールを課せられ、隔離された共同生活を送ることになります。
何も知らされていないミチルと同じ視線で読者は物語を進んでいくので、ミチルの不安が直に伝わってきてドキドキさせられました。
稲穂の海の中で停まった列車から飛び降りる場面や水路に流れる花の情景が醸し出す美しくも儚い雰囲気がより物語を謎めいた混乱に導き、最後はどうなるんだろうとページを繰る手が止まりませんでした。

ラストは、子どもには容赦が無くシニカルな方向へ。
何かを失ったけど、同時に何かを得た少女たちの姿が清廉で切ない、印象的なラストでした。

(2019年2月読了)
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プロフィール
HN:
sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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